古事記、日本書紀をないがしろにする今の歴史学会では、とても日本人の精神は解明でけへんな。

 産経新聞に「話の肖像画」という連載企画があります。今月は、静岡大教授で文化人類学者・楊海英(ようかいえい)さんが登場してはります。南モンゴル出身で2000年に日本に帰化してはります。幼少の頃に文化大革命が始まり、波乱万丈の人生やのにまだ55歳、と。まだ連載中ですが、昨日(8/29)の記事の中に、思わず「あっ」と声を上げそうな記述がありました。

 国立民族学博物館の大学院生として研究生活をしていた頃、その民博が、当時の文科省の科学研究費補助金(科研費)をもらえることになり、大規模な現地調査をすることになった、と。そこで楊さんは、「通訳」という役割で参加をさせてもらえた、ということやそうです。私が驚いたのは次の記述です。

 ユーラシアの遊牧民には英雄叙情詩を語る文化があります。語り手が天幕に人を集め、チンギスハンやアレキサンダー大王などの壮大な物語を延々とそらんじる。長い物語だと数カ月間も語り続け、そういうときは「今日はここまで語るよ」とあらかじめ区切って、1日2、3時間、何も見ずに即興で語るんです。語り手は大変尊敬されていますが、ほとんどの人が字を読めない。読めると物語の内容を書いて残し、それを記憶して頭の中で読むから情報量が限られてしまう。字が読める語り手の調査を行ったことがあるのですが、その物語は圧倒的に短かったですね。

 ひええー、これって、日本で言うたら『古事記』のことやんか、と思いましたね。一応私らの年代では、稗田阿礼(ひえだのあれ)の口伝を太安万侶(おおのやすまろ)が記録した、ぐらいの感じで習うた記憶があります。今調べたら、既に書かれたものを謡習したものを記録した、ということのようです。ちょっとややこしいな。私が言いたかったのは、日本人の歴史は、最初はユーラシアの遊牧民と同じ口伝えやったんとちゃうか、ということですね。

 遊牧民は語り手以外の普通の人も記憶力がすごい。一家の祖先の名前とそのころの一族の状況も代々、語り継がれているんです。モンゴル人は7代くらい前までで、私も子供のころまでは頑張っていました。カザフ人はすごくて27、28代前の祖先まで遡(さかのぼ)っていける。文化人類学では1代を20年と数えますので、カザフ人は500年以上前の1500年代、日本でいえば室町時代に自分の祖先がどこで何をしていたか、ごくふつうのおじいちゃんがすらすら話す。

 稗田阿礼より、もっと多くの情報を持っていた日本人が当時、他にもいっぱいおった可能性はありますね。そしたら産経新聞で、宮崎正弘さんが寄稿してはったのを思い出しました(明智光秀は本当に謀反者だったのか 戦後歴史学に異議あり!)。

光秀は、これまで「主殺し」「謀反者」という評価しかなく、英雄とはおよそ無縁の武将として過小評価されてきた。その最大の理由は、豊臣秀吉が右筆たちに命じて明智光秀を極悪人と描く情報操作を展開した結果、徹底的に誤解されてきたためだとわたしは考える。

 宮崎正弘さんはだいぶ前に『明智光秀 五百年の孤独: なぜ謎の武将は謀反人と呼ばれたのか』を出してはりますね。明智光秀が本能寺に蹶起(けっき)する前々日、眼下に本能寺を見下ろす京都・愛宕山の愛宕神社で催された連句会で詠んだ句の話です。

 「ときはいま 天(あめ)が下(しも)しる 五月かな」
 「あめがしもしる」を「雨が降って寂しい心境」などと解釈するレベルは論外である。古事記、日本書紀に頻出する「天の下」「しらしめす」とは天皇の統治を意味する。「天皇親政」をうたう『神皇正統記』と『愚管抄』のバックボーンとなる思想を紡ぐ言葉である。光秀はこうした教養を前提に、「しもしる」という言葉を選んだのだ。

 いやあ、歴史は面白いですね。宮崎さんは今の歴史学会を痛烈に批判してはります。今の歴史学者から、なんでまともな評論が出て来やへんのかとして、3つあげてはります。

 第一に歴史学界、歴史論壇には一種独特な「空気」があり、学閥が蔓延り、学者らは視野狭窄(きょうさく)に陥っている。

 第二に戦後の歴史学者の多くがじつは古事記、日本書紀を読んでいないか、もしくは一読しただけで済ませているという知的貧困である。だから「天が下しる」の意味が理解できない。知的劣化である。

 第三が神話の位置づけだろう。古事記にみられるような神話を評価しない思考回路では、光秀の志を理解することもできない。また、合理主義の影響を受けすぎた現代歴史学は科学的・客観的事実のみに重点が置かれ、資料読みが専門の歴史研究者は文献の解釈のみという視野狭窄に陥りやすい。光秀に汚名を着せるための、秀吉がなした歴史改竄を見抜くことができないのだ。

 そうや、今の私ら日本人はみんな、秀吉の歴史改竄をちゃんと見抜かなあかんのや、というわけですね。上の「第一」の理由の説明の中の、次の文章には思わず膝を叩きました。東大法学部の大物学者が言い出した間違いだらけの憲法解釈は弟子達によって今なおばらまかれ、内閣法制局や最高裁判所にまで影響を及ぼしている。

 宮澤俊義の「八月革命説」のことですね。いやあ、いろんなことがつながってるんですね。今の日本人の精神的な劣化を、何とかして食い止めたいもんですね。

【文中リンク先URL】
https://www.sankei.com/life/news/200829/lif2008290004-n1.html
https://special.sankei.com/a/life/article/20200821/0002.html

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